朝顔

 潜行挺のブリッジ前部探照灯で照らし出される光の筋の中に、海溝の底にある裂け目から湧き出し続ける気泡が、小さな粒から大きな泡へと体積を増しながら姿を現し、そして漆黒の闇のかなたへと消えてゆく。わだつみ号の操縦士と海洋研究者は、深い裂け目の中へと降りて行った。そこに有るだろう地殻変動の異常の跡を求めて、

 小松左京の『日本沈没』では、太平洋側のパシフィックプレートとオホーツクP.&フィリピンP.の下への潜り込みで、日本海溝起源での列島沈没シナリオだが、実際には日本海側のユーラシアP.がオホーツクP.を巻き込んで沈み込み、1万年後には新潟沖くらいからの境界線上に海溝が出現するようだ。最近の学説の主流は太平洋側の海溝よりも日本海側の新潟沖の群発地震に注目している。現実となれば、日本人はお魚にでもならないと生き延びられそうにない。

 ただし、悠久の時間軸の地球の営みの中での御伽噺的な現実であり、現代人の思慮の範囲を超えて存在する真理となってしまう。