菩薩像

 2年ぶりの上京となった。通い慣れた駅からの裏道を歩いた。夏の陽が暑いが、短パンに半袖Tシャツにハイカー仕様の皮のブーツ、歩き始めなので肩に背負ったリュックの重さはさほどでもない。ビルの隙間の脇道を通り過ぎ、目的地の前に着いた。階段を登りエレベーターで2階へ、ドアノブを回すとロックが掛かっており、インターホーンを押しカメラを覗いて後尻して、入り口に直立して控えた。すぐ反応があり鉄のドアサッシが明き、目が合った。経理担当者の男性が出迎えると期待していた男には、両手を広げ歓迎の意を表現する、微笑んで見詰める小柄の女が意外であった。室内奥で会議中にも関わらず、遠慮がちな男を女は来客中の場に通したので、正面の席に陣取る馴染みの士族に焦点を合わせて、『どうも!』と挨拶後、初対面の男2名のうちで、上位席に陣取る若い方にフォーカスして挨拶する。客の入れ替わりとなり、男が主客と成った。

 後で考えれば、このとき上京した首題は完了したようだ。翌朝、二天門までホテルから10分ほどグーグル案内で確認した道を歩いたが、途中、二天門の在り方を通りで出会った年配の女性に確認すると、目的地は目の前の交差点を挟んで聳えていた。熱い1日のはじまりとなった。