ヒトツバタゴ

石原新太郎短編全集Ⅱ 幻冬舎 『やまとたける伝説』『特攻隊巡礼』あたりから読み始める~

 組織から放り出されたとき、性別の対応の違いがある。女は母であることで地域社会との繋がりのもとに生きていることが多いので、所属していた組織から放り出されても、殆どの女性は母親であることで地域社会に生活の基盤を持っている。

 逆説的に言えば、地域社会との連帯なしに子育ては出来ないので、母親は地域社会人であり得る。

他方、組織を卒業した男はだらしない、地域社会人としての基盤が無いことが殆どであり、彼の眼は虚ろであり、無常の寂しさの湖に浮かぶ小舟となる。

よって、独り身の女はなんとか社会と折り合いをつけて生きてゆけるが、独居の男は隔絶した地域社会で朽ち果て、都会の歩道に落ちた葉はその社会の腐葉土となることなく、清掃車の回転ブラシで掃き出されどこか消えてゆく。

我が同朋よ、年老いて組織を卒業したら、まずは地域社会人となることに励め、かくして、男は緑林の遊歩道を日々駆け抜ける。