銀杏並木

 夕方、図書館で日経読見終え、ウオーキングに出掛けようとして、新聞ホルダーに挟み込もうとすると、上手くいかない。蛍の光のメロディーが関内放送で流れ出した。焦って手元がままならない、なんとか、収納庫に納め、急いで出口に向かった。途中、館内員は退社モードで忙しく、それぞの仕事手仕舞い真っ最中の雰囲気が充満する、彼等の仕事場を後に夕暮れの森に出た。

 夕日が曇天にところどころ遮られた、斑尾な雲の切れ端が上空の風向きに整列した橙と青い空を背景に、小高い丘から一匹の狼は駆け下り、雨がぱらついて来た草原の入り口まで到達した。丘からの出口辺りで、地図を表示したスマホを前足で抱えながら、普段なら関わり持とうとしないだろう獣に、手元の道案内を見せながら、なんと迷えるの仔羊は声を掛けた。近くの渡し場までの道すじを聞きたい一心の若い雌であった。

 狼は森の出口からの道なりを教えて一件落着したので、

 『何処まで行くの?』と優しく問えば、

 『Gまで』とのことで、

 『最後の渡し舟まで時間が十分あるので、1周野駈けをしないか?』と見栄えのよいこの平野のアングルが有ることを彼は優しく教えた積もりだった。

 夕暮れの帷の中、女の口元は微笑んでいた。

 さて、この後は紙面の都合上またの機会と言うことにしたい。