木蓮

朝のランニングを終了して、遊歩道脇の木製のベンチでしばらくネット掲示板をいじった後、陽の上がった帰り道を歩いて、いつもの帰り道、ちょうど列車が通過予告の赤い点滅灯と警告音が一定リズムで繰り返しはじめた。踏切の遮断機の前まで来ると、後方からの気配と共に、一台の灰色の軽自動車が私の横に滑り込んだ。

ラクションが鳴ったのと同時に振り返ると、車の窓の向こう側に女性ドライバーと目が合った。助手席側のウインドが下がった。

スリムな体系のいい女が微笑んいた。

よく見れば、後部座席からこちらを凝視するもうひとつの視線と重なった。

誘われたと解して、乗り込もうと意志の姿勢を示す刹那、彼女達がこの後、近くのスーパーへの買い物途上である旨が判明したので、そのまま歩いて帰ることにした。

線路沿いのいつもの路を少し眩しい昼前の輝きの中、頬にあたる風が心地よい、 車窓越しに見えたのは、確かにひとりのいい女だったと改めて思って、口元が綻んだ。