初めてのお使い?

 妻が、ちいさな紙の切れ端に、3行ほどの小さなメモ書きをして、手渡した。いわゆる、買い物リストである。先程、まるで蟻が造り上げたよううな、食料庫から取り出して来たアイテムを見せて、アルファベットと数字で出来上がった、箇条書きの表す1品が何かを示した。スーパーのPB商品である飲料品であることを教えていた。それを含めてのテレビCMで知っていたジュース類と娘の好きなお刺身が書き添えられていた。

 テレビでたまにやっている、『初めての買い物』さながら、

 手渡した買い物5点を見て、彼女は言った。

 『わたしととうさんが食べる分は?』

 『・・・!』

 買い上げ5点のうち飲料は2アイテム2品の4個を右と左手で掴み、無料透明袋に納めた刺身ひとパックを抱えて家路に着いていた。帰路中抱えたものが不安定であり、結構慎重に運んで来たのだ。うまく運びきることで精一杯で、玄関を通り、奥の声の方にひたすら向かい、目が合った女に無条件に手渡した。

『二人の食べる分は?』

よく考えて見れば、小さなワンパックでは大人3名分は無理である。ただ、帰りしなあのワンパックを3人で分けるイメージを頭の思考回路が正方向に回ったのを覚えている。入り口の奥に積み上がったお買い得商品となっているダンボール積みのセール品に近づいて見れば、手の買い物リストの1品のアルファベット文字と数字の表すPBアイテムであった。次になっちゃんシリーズの飲料を探して、奥のコーナーを大回りすると、店員が作業中であった。なっちゃんを探してる旨を伝えると先導してスタスタ進んでゆく。大きなL字冷蔵庫の中段にそのシリーズものが直ぐ見えた。あとは、刺身パック1っこでお買い物は終了となってしまっていた。

『これいつものより、量も多いし美味しいね!』と言うと、

『こんな高いもの買わないもの』と妻がぽつりと言った。

 もう一度出かけて、買って来た刺身を手渡すと、皿に盛り直され、アイランドキッチンの窓から出てきた美味しそうな刺身とお吸い物を、テーブルに座って夕食となっていた。