ある日とつぜんに

 以前からなんども試みたが、声の主の姿を確かめることが出来ないでいた。1昨日、雨上がりの樹林に声の主の居所と思しき付近を凝視したあとで、諦めてそこを離れた刹那、鳴いていた虫が上空に飛び立ち青い空の中に飛翔した。そのとき、蝉の鳴き声で特定したあたりが起点となっていたので、鳴き声を頼りの捜索自体の精度に自信を持った。

 樹上の一点を見つめていると、透明な羽を震わせている。後退りしながら掴まる枝を降りて、緑色の葉陰に隠れた。見る角度を変えて樹上を覗けば、一心不乱に羽を震わせ泣き続けている。

 撮影しようとレンズ越しの画面を見れば、なかなか旨く、画面内に配置されない。スマフォのレンズ孔の位置が右上端に偏っており、なかなか難しい。数枚撮影して、2枚がヒットした。

 補色で樹皮に同化した虫の見極めは判事ものとなった。