蒸暑

 『この子は散歩しないのですか?』と問い合わせると、乳母車の子は予想していた老犬ではなく、けたたましく吠える邪犬のようだとすぐ理解出来た。

『さっきは吠えてごめんなさい!』と謝って、頭を下げ気味に目配せして来た。

 エクササイズスタート時坂道を降りて来る彼女たちと行き違い際に、挨拶を交わした刹那、吠える子犬のリードを引いて制御しようとした。避けるように身を交わして走りながら振り返ると、乳母車がリードと絡まって転倒していた。ことの成り行きは、本人がリカバリー範囲内とそのままのやり過ごした。5周して銀杏並木の下で、乳母車を押し、愛犬のリードを手にするマダムと再会となった。すれ違い際に乳母車に乗ってる老犬を覗いたら、老犬ではなくて邪険に吠えられた。

 『#$%&!』と何か弁解しているようであった。最近は、難聴なのか興味が向かないと判聴不能な場合、笑顔スルーとなってしまう。別段不都合は発生しないのでそのままの成り行きとなった。

 いつも出会う見知らぬ散歩仲間であった。

 蒸し暑い無風の朝、蒸暑の中でエクササイズ終了となった。