手摺

 スタート時間の15分くらい前に、アリーナに降り立った。まだ、誰も来ていないので、ひとりでコートの準備をはじめた。2面だけネットを張り終えた頃に、やっとこの同好会の発起人が道具類の入ったバッグを両手にして現れた。

 暖冬である前振りとは逆に、肌身に寒さが凍みる年明けからの日々となった。天井の高いアリーナなので、コートを羽織っていても冷たさを感じてしまう。

 メンバーが来ないものか?とアリーナ入り口を見ると、手摺に体を支えながら、階段を降りてくる人がいた。メンバーであったが、事情で同好会を脱退するようだ、元々足腰を傷めているような動きをしていた。バドミントンは相当ハードなスポーツであり、バスケットボールと同等レベルらしい。メンバーの皆さんが元経験者であり、20代嬢は体幹を弓なりにして空を飛ぶ!のを目撃したときは、目が点になった。爺なれども、コロナ禍3年間の日々10kmのランニングで培った、体力に自信があったので、体力任せに動きまわることは出来るが、奥に振られたあとのドロップショットに対応出来ない。いいよう遊ばれる。同じパターンで攻められるのが、判っていても身体は反応出来ないものだ。

 1年経過して、少しはラリーらしき ものが出来るようになったが、両膝と右肘にサポーターが必須となっている。

 手摺に縋った姿勢で降りて来たメンバーは、他のグループにも所属しているとのことで、脱退してひとつにセーブすると言う。

 脊柱狭窄が腰の辺りで発症しているとのことで、運動をセーブすると言っている端から、卓球をはじめると言うので、

『そんな状態で、バドミントンやるわけ?』と問い掛けると、

『動けないので、ちょうどいいかも、相手できますよ!』と返された。