あきのそら

 5時前に起床して、マーケット全体俯瞰した。逃げたことが良かったのか?自立反発している相場を眺めると、一瞬揺らいでしまう硝子細工で積み上げられた、己自身の心細さを見詰め入る私がいた。いつも通り、週末のトランザクション処理を起動して、早朝の道を歩き始めた。

 線路際の向こう側で、いつもの見慣れた光景が目に留まって立ち止まり、専念している背中に声をかけた。いつもは挨拶をかけているだけだが、互いの気配はお馴染みさんである。

『列車が来たときどうされているの?』

『通過する時間わかってるので、身体を寄せる!』

『?』

『運転手から見えると迷惑掛かるので、小さくなってる。』

『草陰にうずくまるの?』

 老婆の笑顔が相槌を返して来た。線路脇にあちらこちらと咲いている、草花は彼女の子供達のようだ。

 先日訪れた某博物館本館1皆10室に展示されていた、満月の掛け軸である。

 同館所蔵の国宝螺鈿仕様の装飾鞍?