待ち合わせ

 日本橋口側の駅のドアを潜って、左手の階段を上がった。大手のコーヒーショップで、モバイル用電源が備わっている店舗であることを、実際の席で確認してから、ミドルカップのコーヒーとレジ前に並んでいたポテトチップを購入した。

 菓子袋の裏側を返して見れば、大手メーカー生産であることが判った。食べ慣れた味覚であり、

 『そうなんだ!』と納得した。

 待ち合わせの時間まで、2時間ほどあるので、某国の言語アプリで日常会話の確認をすることにした。数年以前には、国民的詩人の有名な叙情詩を諳んじて、暗証出来るまでになったが、何故かテレビの講座が終了してしまい、日常会話くらいは、通訳者相手に通じるレベルのようであったが、3年のブランクでどこまで覚えているのか、自信がなかった。

 久し振りにみるスラブ語が、結構読めているのに驚いた。格変化以外は単語の羅列が文章になっているから、彼国の国民的詩人の1編は殆ど霧消となってしまったが、発音の聞き分けは残っているようだった。

 期待感で膨らんだ夢は叶わず、本日仕事が入っていると言う、美人通訳者とは会えず仕舞いとなった。不埒な夢も冬の乾いた空に昇華して消え、より一層の女神像が我が心の奥に鎮座することとなってしまった。