インバウンド

 夏場以降、世間で言うところの観光客の増勢がネットニュースや新聞紙上で報じられている。先月まで、館内の展示物閲覧時、記事で表現されるほどのインバウンド観光客の増勢を殆ど身近に感じていなかった。ただ、入館時に待ち並ぶ行列に違和感が少しずつ増していた。

 正門の前辺りで、閲覧ルートを決めかねている、フォリナーのオールド・カップルを目にとめたりもしていた。以前、閲覧先を迷っている、旅行客の二人連れに宝物館に行くべきだと説明したことがあった。館内の舗装面に描かれた、円形のアイコンを指差しながら、

『This is best !』と言って、今から向かう方向を指差したとこまでは、実際にあったことだが、その後どうしたのか?よく覚えていない。

 二人連れの旅行客を伴って、宝物館を訪れたのだろうか?

 館内を回っていると、いたるところで、海外組みの観光客の集団とぶつかりそうになる。どちらかと言えば、外人観光客で満たされた、各展示室があたかも水族館の水槽となり、その中を回遊している、国内自生のお魚の気分となった。

 美人がいると、見入ってしまう癖があるので、見つめられた対象物の挙動が国内外問わず、同様な振る舞いになるようだ。要するに、見詰める不審者を意識して、相手を確認するような素振りの後、視線を遮る位置に身を置くことになる。

 不躾な視線は、甚だ礼儀作法に乗っ取ってはいないが、甘いフォーカスの先の挙動が、我が審美眼の許容範囲内のうちに治まっているうちは問題無さそうだ。