タイツ

一日中タイツ姿でいることが多い。もともとは、日々のエクササイズにパンツ&Tシャツでランニングをしていたら、季節は木枯らしが吹き始める頃となっていた。走っているときは熱量を帯びるので、走り始めて3kmを過ぎるまでをどう凌ぐかとなってしまう。但し、汗にまみれた状態で寒風の中にいれば、体調を崩すのは目に見えていた。

ジム通いをしていたとき、よく見たタイツ姿のトレーニング通いの仲間を見ていたので、近くのスーパーでそれらしきものを買い求め、家族に披露した。

紺灰色の濃淡で幾何学模様のタイツを着用した男を見て、2人の家族は大笑いして、

『父さん可笑しい!』

と腹を抱えて笑い転げた。スーパーの売り場で迷った挙げ句、控え目な柄を買い求めた積もりだった。

妻と娘の厳しい眼も、見慣れると壁の模様となるように、男自身の違和感も自信と共に胡散霧消した。

外出時はトレーニングパンツを着用するが、自宅ではタイツにTシャツが常態化して頗る楽ちんである。

ズボンなんか鬱陶しくて履く気がしない。女性のスカートはもっと下半身に自由度がありそうで羨ましい。彼女達は身体に脂肪のタイツを付帯しているようなものだからと、我が想念は浮遊する。

 季節は移り、蝉しぐれの季節となったが、つい最近まではスパッツ着用して走っていたが、と言うより脱げなかった。肌に直接外気に晒すのが何故だか躊躇われたのだ。今年夏はいつになく暑い。と言うことで、幾分頼りなさげな素肌の足を晒して、なんとか走っている。